イヌの会陰ヘルニアはこれを見て!【獣医師が分かりやすく5分で解説】
「おしりが膨らんでる」
「うんちを出しにくそうにしている」
「おしっこを出しにくそうにしてる」
おうちのわんちゃんにこんな症状がありませんか?
最後まで読むことで、イヌの会陰ヘルニアを理解し、会陰ヘルニアでのつらい生活に終止符を打つ事につながります!分からないことは私たちにお気軽にお問い合わせください。
目次
会陰ヘルニアとは?
会陰ヘルニアとは、会陰部という肛門から陰嚢(メスの場合は膣)の部分に、おなかの中にある臓器(腸、膀胱、前立腺など)が移動して突出してしまう病態のことです。

会陰ヘルニアの原因は?男性ホルモンの影響か
会陰ヘルニアの原因は完全に解明されていませんが、男性ホルモンの関与や、骨盤への過度な圧力、および先天性あるいは後天性の筋力低下や萎縮によると考えられています。ほとんどが去勢手術をしていない雄イヌに発生することから、特に男性ホルモンの関与が強いといわれています。
会陰ヘルニアの症状は?排便ができないことも
力んでも便が出ず、苦しそうにしている!
会陰部に腸が出てしまっているイヌが多くみられます。本来の構造である腸から肛門までまっすぐの道ではなくなるため、排便に余分な力が必要です。そうすることで苦しみながら力んでも便がでないことがよくみられます。
お尻が膨らんでいる!
会陰部ヘルニアが重度になると、突出する臓器によってはお尻のほうまで穴が広がって膨らんでしまうことがあります。悪化する前に見つけられるとよいですね。

おしっこが出せない!
突出した臓器が膀胱、前立腺である場合は、便だけでなく尿の排泄が困難になることがあります。尿が出ないことは緊急状態であり、命に関わる症状であるため特に注意が必要です。早めに動物病院にご連絡ください。
排泄のときに吐いてしまう!
排便の際に力むことで胃に圧がかかり嘔吐してしまう場合があります。食事を摂取できなくなるきっかけとなることもありますので、トイレの近くで嘔吐物がある場合は排泄できているかどうかの観察をしてあげてください。
排便ポーズをずっと続けて、便に血がついている!
排便ポーズが続いていると、過剰な力みによって腸粘膜にある細かい血管が損傷し、出血する場合があります。出血多量で体調を崩すほどの量ではないことが一般的ですが、それほど力がかかっていることを示しています。
会陰ヘルニアはどんな検査するの?
診察ではお尻の膨らんだ部分がどの位置にあるのか、柔らかいのか、硬いのかを診ます。また、膨らんでいる中には何があるのかをみるためにレントゲン検査や超音波検査を行い構造の把握をします。
会陰ヘルニアの治療方法は?
手術で正常な位置に臓器を戻すことが必要
膨らんだヘルニア部分を開いて、中に突出している臓器を元の部位に押し戻します。突出していた部位は多くが萎縮した筋肉の隙間であり、その筋肉をさらに支えるために違う部分の筋肉や、ポリプロピレンメッシュという人工物を用います。
手術しなかったらどうなるの?
軽度であれば、生活に支障をきたすことなく過ごせます。しかし、筋肉の萎縮をきっかけとして発症するため、さらに萎縮が続くと重度に臓器が突出し、排便、排尿に支障をきたします。
会陰ヘルニアの予防方法はあるの?
男性ホルモンが主な原因であるため、去勢手術をすることが最も効果的な予防法と考えられます。また便秘などにより、排便時過剰に力むことも注意が必要です。日頃から排泄の様子なども観察しておくことが大切です。
会陰ヘルニアに関するよくある質問
手術の費用はどれくらい?
ヘルニアの大きさや使用する整復方法によって変わりますが、手術料として15万円以上かかることが考えられます。また、複数回の手術が必要となる場合があります。
手術の難易度は?
会陰ヘルニアは再発率の高い手術として有名です。手術が難しいという点だけでなく、高齢になり筋肉弱くなっていくことによっても再発する場合があります。また、ポリプロピレンメッシュのような人工物を入れることにより体が異物に対して炎症を起こすこともあります。
まとめ
会陰ヘルニアは、発症してしまうと緊急性のある状態になりかねない辛い疾患です。しかし、去勢手術により予防できる可能性が大きくあるため、著者は去勢手術をすることのメリットの一つに会陰ヘルニア発症予防のお話をしています。
右京動物病院では、重度の会陰ヘルニアも対応可能です。様々な理由で手術が難しい状態の動物さんもいらっしゃると思いますので、お困りの方はご連絡ください。
