鍼灸治療について【獣医師がわかりやすく5分で解説】
・鍼灸治療って?
・どんな効果があるの?
・どんな病気に効くの?
そんな疑問に獣医師が5分で解説します。
鍼灸とは?
鍼灸とは中医学の治療法の一つです。「鍼(はり)」や「灸(きゅう)」を使い、身体のツボ(経穴)を刺激することによって疾患の治療を行います。中医学では、動物の体内には「経絡(けいらく)」と言われるものが全身に分布し、経絡を通して生命維持に必要な要素が全身へ運ばれると考えられていました。その経絡上の体表に存在する反応点がツボ(経穴)です。ツボを刺激することにより、様々な効果を得ることができます。
効果は?
・疼痛緩和と炎症の軽減
ツボへの刺激により、脳の視床下部から鎮痛効果のあるモルヒネ様物質の分泌が促進されることが分かっています。また、白血球を活性化させ、疾患の治癒を促進させる効果もあります。
・神経伝達機能の調整と神経保護効果
様々な神経疾患にて、神経麻痺の改善が認められています。
・恒常性機能の改善
自律神経の刺激により、血流や臓器の働きを調整し、身体の持つ恒常性機能を改善させる働きもあります。そのため、疾患の治療を行いながら身体全体のバランスを整え、病気の予防や健康維持に役立てることができます。
どんな方法?
鍼はディスポーザブルのものを使用します。極めて細い円柱状の針で、痛みはほとんど感じません。動物は診察台の上やマットの上など安定する場所にいてもらい、できれば飼い主様も一緒に立ち合いのもと施術を行なっています。
当院では「電気鍼」という方法を用いており、刺した鍼に微弱な低周波の電気を流し、より高い効果を得られるようにしています。時間は30分ほどかかります。
適応疾患は?
・筋骨格系疾患
・神経疾患
・消化器疾患
・皮膚疾患
・呼吸器、循環器疾患
・加齢による変化
など、様々な疾患が適応となります。
鍼治療を行わない方が良いのは?
・貧血、過度に衰弱している場合
・発熱、伝染病疑いのある場合
・血液凝固機能障害のある場合
・高血圧、低血圧時
・過度にストレス状態にある場合
・妊娠時
・電子機器(ペースメーカーなど)が体内にある場合
上記のような場合は、鍼治療は行わない、もしくは注意して実施する必要があります。
どんな時に鍼灸治療を行うの?
・慢性疾患で投薬のみでのコントロールが困難な時。(糖尿病などのホルモン疾患、アトピー性皮膚炎など)
・高齢や基礎疾患により、手術のリスクが高い時。(椎間板ヘルニアなど)
・手術後にリハビリが必要な時のサポートして。(椎間板ヘルニア、骨折、前十字靱帯損傷など)
・抗がん剤治療などのサポートとして。
・加齢に伴う体調の変化を整えたい時。
症例紹介
腰部椎間板ヘルニアを罹患しましたが、高齢のため手術を希望されず、鍼灸治療を希望し当院を受診されました。

来院初日の時点で発症から2ヶ月が経過していました。
両後肢ともに麻痺しており、起立歩行は困難でした。
腰部椎間板ヘルニアのグレードⅣと仮診断されました。
週1回の鍼治療を継続し、少しずつ麻痺は改善し、2ヶ月後には起立歩行が可能になりました。

鍼治療の効果は即効性を感じられることが多く、
早ければ施術後すぐに改善傾向が認められることがあります。
その後は少しずつ来院の間隔を空けていき、月に1回ほどの通院を継続し、日頃のケアの一環として鍼灸治療を続けていきました。
まとめ
鍼灸は大きな副作用なく実施できる医療です。
疾患の治療だけではなく、身体の状態を整え、病気を予防するためにも有効です。
右京動物病院ではUZUMASA分院にて、鍼灸治療が可能です。
鍼灸治療についてご相談や治療をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
