フィラリア症って?【獣医師がわかりやすく5分で解説】

犬や猫を飼う上でよく聞く単語「フィラリア」
いまいち何のことかわからない…という方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
そんなフィラリアについて獣医師が5分で解説します。
フィラリアとは?
フィラリアとは蚊に吸血されることで犬や猫に感染し、肺動脈に寄生する寄生虫です。適切な予防処置をすれば感染することはほとんどありませんが、一度感染してしまうと診断や治療は単純なものではないことが多いです。また、フィラリアに感染すると場合によっては後述するような重篤な症状を示し、最悪の場合亡くなってしまう怖い寄生虫でもあります。
症状は?
フィラリアは幼虫の状態で寄生し、この段階では無症状であることが多いです。これらの幼虫が体の中で成長し、いずれ成虫になり、肺動脈に寄生します。肺動脈でもさらに大きくなり、幼虫感染後約6~9ヶ月ほどで症状を示し始めます。症状としては以下に示すようなものがあります。
- 息切れ(運動不耐性)
- 食欲低下
- 呼吸困難
- お腹が膨れる(腹水)
- 失神
- 咳
- 四肢のむくみ など
また、寄生期間が長いと心臓や肺の損傷が増大し、最悪の場合死に至ることもあります。上記の症状が認められた場合は動物病院を受診してください。
診断方法は?
フィラリア症の診断は血液検査、レントゲン検査、心臓の超音波検査などを用いて診断します。しかし、慢性化しや症例や逆に初期の症例では診断に苦慮することがあります。
治療方法は?
フィラリアに感染してしまった場合、単にフィラリアを駆虫すれば治療できるという単純なものではありません。大量の成虫が寄生している状態で成虫を駆虫してしまうと、血管が詰まったり炎症がひどくなる可能性があります。そのような治療の合併症を最小限に抑えながら、幼虫や成虫を駆虫します。また症例の状態によっては駆除だけではなく状態の安定化のための治療(利尿剤、血管拡張剤、強心剤など)が必要となる場合もあります。
フィラリア予防について
予防期間は?
先述の通りフィラリアは蚊を媒介する寄生虫であるため、蚊の活動期間が予防期間となります。地域にもよりますが、当院では5月から12月までの予防を推奨しています。この予防期間については、地球温暖化などの影響により今後変動する可能性もあります。
予防方法は?
フィラリアは基本的に1ヶ月に1回予防薬を投与することで予防することができます。予防薬には錠剤のものやおやつタイプのものなどがあります。また、年1回の注射によって1年間予防するといった方法もあります。どういった予防薬があるかは動物病院により異なりますので、かかりつけの動物病院に問い合わせてみてください。
フィラリア予防薬を飲み忘れてしまった場合は?
前提として、フィラリア予防薬の投与をたった一度でも忘れたり、遅れたりするだけで感染してしまう可能性があるため予防薬の投与は忘れないようにしましょう。万が一感染してしまった場合、すぐに検査してもフィラリアを検出することはできません。感染後6~7ヶ月後でないと幼虫や成虫の検出ができないのです。
そのため、予防薬を飲み忘れてしまった場合は残りの期間は必ず飲み忘れのないようにし、翌年に抗原検査、ミクロフィラリア検査を実施して陰性を証明し、その年の予防薬を服用するといった流れになります。
当院では前年の飲み忘れがない場合でも4~5月にミクロフィラリア検査のみ実施し、陰性を証明してから予防薬を処方します。
猫にも感染する?
フィラリアは猫にも感染します。猫のフィラリア症は犬のものとは病態が異なる上に、抗原検査での検出にも限界があるため診断に苦慮し、繰り返しの検査が必要となることが多いです。症状としては慢性の呼吸器症状(咳、呼吸困難など)を引き起こしたり、最悪の場合急死することもあります。
猫においてもノミ・マダニと一緒に予防できる予防薬があるため、「猫だからフィラリア予防はしなくて大丈夫」と考えるのではなくしっかりフィラリア予防しましょう。
まとめ
- フィラリアは蚊を媒介して犬や猫の肺動脈に寄生し様々な症状を示す怖い寄生虫である
- 犬や猫のフィラリア症は最悪の場合死に至るが、適切な予防処置を行えば予防することができる
- 何よりも予防薬の飲み忘れをしないことが大切
- 万が一忘れてしまった場合、残りの予防薬を飲み忘れないようにした上で動物病院にご相談ください
- フィラリアは猫にも感染する可能性もあるため、猫での予防も大切