ネコの乳腺腫瘍にご注意を‼︎【獣医師がわかりやすく3分で解説】

乳頭の周囲にしこりができている」
「乳頭付近が赤く腫れて、触ると痛がる」
ネコちゃんでこういった症状がありますか?
心当たりある方は、危険信号かもしれません。最後まで読んでもらえたら、乳腺腫瘍について理解し、次にどうすべきか分かるよう丁寧に解説していきます。疑問点があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
目次
乳腺腫瘍とは
乳腺腫瘍とは、読んで字の如く乳腺にできる腫瘍のことで、良性のものから命に関わる悪性のものをひっくるめた総称のことを指します。ネコちゃんの場合80~90%で悪性と報告されています。また、乳腺腫瘍は4段階に評価(ステージング)が分かれており、数字が大きくなるにつれ、今後の経過の見通しが悪くなっていきます。
乳腺腫瘍の原因
乳腺腫瘍は幾つもの要因が重なって発症すると報告されているのですが、一番大きな原因として考えられているのは性ホルモンです。未避妊のネコちゃんはもちろん、避妊しているが1歳以降のタイミングであったという子も注意が必要です。
乳腺腫瘍の症状

初期では腹部にできる大豆程度の硬いしこりが特徴です。放置すると腹部の半分を覆うような大きさになり得ります。また、サイズが大きくなるにつれ、皮膚が赤くなったり、裂けたような見た目を呈することがあります。日頃から腹部を触診し、早期発見することが重要です。
乳腺腫瘍を診断するための検査は ?
病理検査・細胞診
乳腺腫瘍を診断する確実な方法は手術で摘出した組織の病理検査になります。ただ手術した上での検査となるので、その前に行う簡易的な検査として細胞診を行います。針でしこり部分の細胞を採取し「がん細胞らしい特徴があるか」「炎症性の変化か」など、大まかな判断を行います。
レントゲン・エコー
悪性の乳腺腫瘍の場合、肺や肝臓などの臓器やリンパ節に転移の有無を確認し、簡易的なステージングを行います。
CT検査
レントゲンやエコーでは見つけられない5mm以下の細かな肺転移、リンパ節転移や腫瘍がどのくらい浸潤しているか確認することができ、より正確なステージングを行うことができるので推奨されます。人医療では必ずCT検査を行いますし、猫ちゃんにおいてもCT検査を用いたステージングが重要と考えます。
血液検査
猫ちゃんの現状把握、また手術を行う場合、手術や麻酔に耐えうる体かどうかを確認します。
乳腺腫瘍の治療法
治療法に根治的治療と緩和的治療の2つがあります。ステージ1~3に関しては基本的には手術で物理的に取り除くことで、根治を狙います。ネコちゃんの乳腺腫瘍の場合、ほとんどは悪性腫瘍であり、高確率でリンパ節転移するのでたとえサイズが小さくても腫瘍のできた側(もしくは両側)の乳腺とリンパ節を全て切除することが強く推奨されます。また、外科で不十分と判断した場合、抗がん剤を投与することがあります。
ただ、ステージ4と認められた子に関しては根治治療は適応とならず、痛みの緩和や進行を遅らせる緩和的治療(放射線治療や痛み止めなど)が選択肢となります。
乳腺腫瘍を予防
1番の予防は、発情期が来る前に避妊することとされています。生後6ヶ月前後で避妊することで乳腺腫瘍の発生を91%低下することができるとされています。13ヶ月を超えると予防効果がほとんどなくなるので、それまでに避妊することがとても重要です。
乳腺腫瘍のQ&A
Q1.こんなに検査って必要?
- 乳腺腫瘍は、見た目だけではステージングできない病気です。転移がある場合、手術の目的や方法、今後の見通しが大きく変わります。
Q2.乳腺腫瘍が片側だけの場合でも、両側の乳腺を切らないといけませんか?
肉眼的にしこりは確認できなくとも検査で転移が疑われた場合、両側切除する必要があります。また、転移がなくとも予防的効果を狙い、切除する場合もあります。
まとめ
乳腺腫瘍は、早く見つけて、きちんと検査をしたうえで治療を選ぶことがとても重要な病気です。ご不安な点や、ご希望(「もっと説明が聞きたい」「なるべく負担の少ない方法を選びたい」など)があれば、遠慮なくお知らせください。右京動物病院では、「がん」とたたかうことだけでなく、「その子と過ごす幸せな時間」を守ることを大切にしながら、検査や治療のご提案をしていきます。
